「異次元テニス」をめざして

ー 残酷な天使の「アンチテーゼ」 ー

「武蔵」と「石舟斎」と「切り花」

「武蔵」のエピソードです。知っていますか?

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宮本武蔵柳生石舟斎を訪ねたとき、武蔵の宿敵。吉岡伝七郎も石舟斎に教えを請いたいと柳生の里を訪れていました。

柳生では武者修行は全てお断りということで石舟斎は吉岡に会おうとしません。

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石舟斎は、吉岡に面会を断るため、おつうに詫び状と一輪の「芍薬の花」を届けさせます。

それを旅籠の一室で受け取った伝七郎は、

  「これだけ・・・でござるか」(中略)

と答え、「芍薬の花」をおつうに返します。

おつう「あれっ、これはお土産にと大殿が・・・」

伝七郎「むっ、吉岡拳法が次男、この吉岡伝七郎に花などが似合うとお思いか。」

おつうは、「芍薬の花」を受け取り、その旅籠の女中にプレゼントします。

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その女中は、ちょうど、同じ旅籠に泊まっていた武蔵の部屋にお茶を運ぶところでしたので、「芍薬の花」を持ったまま武蔵の部屋に入ります。

こうして、武蔵は「芍薬の花」を手に入れ、すぐに、その「切り口」の非凡さに気づくのです。

武蔵は、自らもその「芍薬の花」を切り、両端の、自分の「切り口」と石舟斎の「切り口」を見比べ、「うーむ」とうなります。

「やはり違う。俺の斬った方と、城内の誰かが斬った方。」

翌日、武蔵は、野に咲く花を何本も切り、その切り口を眺めます。

違う。これじゃ花を殺しているだけだ。あの芍薬の切り口は違った。

あれは・・・切られていながら、なお生きているような・・・

武蔵は、この「非凡な切り口が誰の手によるものかを知りたい」という手紙とともに、自分が切った芍薬を、柳生の城に届けさせます。

武蔵は、石舟斎のもとを立ち去るとき、石舟斎が切った「切り花」をさらに切り、自分の「切り口」と二つ並べて、「石舟斎に見てもらいたい」と言って手渡します。

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場面は変わりますが、武蔵が、伝七郎と道で出会います。

別れ際、武蔵は「吉岡殿、道中の慰みに花をやろう。」

伝七郎「むっ、いらぬ!」

武蔵が花を投げると、伝七郎はそれを一刀で切り裂きます。

伝七郎「フン、この伝七郎に花などが似合うと思うか。」

その花の切り口を見て、武蔵は「死んでるよ吉岡伝七郎。」

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実は、石舟斎の弟子たちも誰一人その「切り口」の非凡さがわからなかったのです。

ナダルフェデラー「切り口」非凡さがわかるようになりたいですね。

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